犯罪・刑事事件の解決事例
#不当解雇

雇用保険の便宜を図り解雇扱いにしたら労働審判を申し立てられた事例【会社側】

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鈴木 祥平 弁護士が解決
所属事務所みずがき綜合法律事務所
所在地東京都 新宿区

この事例の依頼主

40代 男性

相談前の状況

A社は、トラックの運送業を営んでいる会社でしたが、経営が悪化し金融機関との協議のうえで立て直しを図っておりました。従業員を大幅に減らさなければならないという状況の下で、従業員に対する残業代が適切に支払われていないという事実が発覚しました。残業代を支払っていなかったのは、従業員の給与を日当で計算していたため、1日の法定労働時間8時間を超えたとしても支払わなくてもいいという認識をしていたからです。A社としては希望退職者を募ったところ、従業員のXさんが希望退職をする旨の意思表示をしたため、Xさんに未払い残業代をいわば退職金として支払う格好で退職をしてもらうことになりました。ただ、すぐに仕事が見つかるかわからないことから、雇用保険の都合上、会社都合扱いにしてほしいという要望があったため、A社はXさんに対して整理解雇通知を出してしました。Xさんが退職してから2か月経った頃、Xさんは弁護士を立てて内容証明で解雇無効と解決金として給料の6か月分の180万円、そして、未払い残業代として退職時に支払済み以外の200万円を求めてきました(合計380万円)。A社としては、いきなり弁護士の内容証明が来たことにびっくりして、当職のところに法律相談にお越しになられました。

解決への流れ

当職としては、形式上は解雇の形式をとっているものの、上記の経緯からすれば、A社とXさんとの間には合意での退職が成立しているものと認められるし、また、残業代についても、双方の合意の上で全額を支払っており清算済みであるといえるのではないかと判断し、弁護士の内容証明に対しては、当職名義回答を出しました。そうしたところ、Xさんは労働審判を申し立ててきました。労働審判では、Xさんは「形式的に解雇の取り扱いにしたことや任意に退職に応じた」ことを否定してきました。A社は、Xさんと合意書を取り交わしていなかったため、Xさんとのメールでのやり取りを証拠として提出し、Xさんとの間で未払い残業代を支払ったうえで、合意退職をすることと形式上解雇扱いにすることで雇用保険の便宜を図ることの合意があったという主張をいたしました。その結果,労働審判委員会にX社側の主張の正当性を訴えることで,合意による雇用契約の終了が認められました。ただ、未払いの残業代については、Xさんの証拠が薄いものの、ある程度の上乗せしてあげたらどうかという労働審判委員会の助言があったため、50万円までなら支払うということで提示したところ、Xさんも訴訟になることを嫌がったため、合意をすることができました。当職の請求の380万円から50万円にすることで330万円の減額をすることができました。

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鈴木 祥平 弁護士からのコメント

弁護士の立場から、このような紛争を予防するにはどうしたらよいかとアドバイスするとすれば、このような事案では,退職時にきちんとの「合意書」を取り交わしておくことが必要不可欠です。専門家である弁護士に早い段階から相談することが有益だと思います。そうすれば、弁護士にも不必要な費用を支払うことがなくなると思われます。