この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
会社の名誉を棄損する投稿(口コミ)がなされていたい事案で、代表者様から、投稿された口コミの削除と投稿した人物を特定をしたいとのご相談でした。投稿されてから1年近く経過していましたので、発信者情報開示請求は難しい事案でした。そこで、削除のみ行うことにしました。
解決への流れ
投稿された口コミの内容を確認したところ、十分名誉毀損に該当する内容でした。まずは、口コミサイトに対して削除を要請しました。名誉毀損に該当する理由を整理し、書面で丁寧に説明をしたのですが、残念ながら、削除はしないとの対応をされました。そこで、削除仮処分申立てを行いました。申立後、相手方にも弁護士が付き、反論をする書面が出てきましたが、裁判所は、名誉毀損に該当すると判断し、無事に削除仮処分命令が出ました。その後、無事に口コミが削除されました。
削除請求の場合、裁判上の手続きを利用しなくとも削除に応じてもらえる場合があります。しかし、今回は任意の削除には応じてもらえませんでした。名誉毀損に該当するか否かの判断は容易ではないため、やむを得ないところです。名誉毀損の事案では、おおむね次の3点が争いになることが多いです。・対象となる人が特定されているか(同定可能性)・社会的評価の低下が認められるか(名誉毀損といえるか)・記載内容が真実に反するか否か(真実に反することの疎明が足りるか)名誉毀損は、当該人物の社会的評価の低下が認められなければなりません。そのため、誰についての投稿なのか、特定できることが必要です。社会的評価が低下したか否かは、一般読者の通常の読み方(捉え方)を基準に判断します。プロバイダ側は、社会的評価の低下に関し、受忍限度を超える社会的低下は認められないと反論してきます。例えば、否定的な口コミであっても、口コミサイトはそのようなマイナス評価も含めて成り立っていますし、プラス評価だけでなく、マイナス評価であっても一般消費者は知りたいと考えるはずです。そうすると、事業者である以上、否定的な評価もある程度は受け入れる必要があるかもしれません。受忍限度を超えるか否かはよく争いとなりますが、少なくとも、今回の投稿内容は受忍限度を超える内容でした。次に、社会的評価が低下するとしても、投稿された事実が、公共の利害に関する事項で(公共の利害)、公益目的があり、投稿された事実が真実である場合(真実性)には、違法性が阻却され、名誉毀損は成立しません。要するに、社会的評価は低下するけれども違法ではない、という理屈です。公共の利害と公益目的は通常認められるので、もっぱら真実性が争いになります。真実性は、自分の権利が侵害されていると主張する側(削除や開示請求を求める側)が、真実ではないことを、積極的に明らかにしなければなりません。今回のケースでもこの点が問題になりましたが、投稿された内容が真実ではないことを裁判所に対して明らかにすることができましたので、無事に削除仮処分が認められました。仮処分命令を出してもらう場合、裁判所の指定する金額を一旦納める必要があります。これを担保金といい、削除の場合には、通常担保金は30万円です。今回のケースでも担保金は30万円でした。担保金は、裁判所から、納付を指示されてから1週間程度で納める必要があります。担保金の支払いができないと仮処分命令が出ませんので、予め用意しておく必要があります。担保金は、仮処分の手続きが終了した後、必要な手続きを執ることで返還されます。ただし、返還されるまで3か月程度かかることもありますので、資金繰りに注意する必要があります。仮処分申立てから削除が完了するまで、通常2~3か月程度かかります。今回も申立てをしてから削除完了まで、約2か月かかりました。無事に口コミが削除され、ご依頼者様にも満足していただくことができました。削除された画面を確認したときは、私もつい嬉しくなったことを覚えています。