この事例の依頼主
40代 女性
相談前の状況
①母が亡くなりました。依頼者には兄と妹がおり、兄は母と同居していましたが、依頼者や妹とは疎遠な仲となっていました。②母が亡くなって葬儀も終了したころ、兄から依頼者と妹に対して「自分が母の面倒を見てきたのだから相続放棄をしてほしい」と言われました。③依頼者は、相続のことであまり兄弟とは揉めたくはないと思いましたが、妹とも相談したうえで、弁護士に一度話を聞いてみることにしました。
解決への流れ
兄には相続放棄を断わったうえで、遺産分割調停を申し立てました。兄からは母の相続財産の開示がありましたが、財産と呼べるようなものはほとんどありませんでした。そこで、母名義の預金口座を遡って調べてみたところ、母が存命中に多額の出金がなされており、兄の口座に移されていることが判明しました。最終的には、兄が生前に贈与を受けていた財産も全て明らかにすることができ、それらも相続財産に加えたうえで、依頼者に法定相続分どおりの財産が相続されることになりました。
はっきり言ってお金は大事です。そしてそのお金を独り占めしたいと思ってしまう気持ち、それも否定することはできません。相続の場面でも、そういった気持ちが表面化してしまうことがよくあります。特に生前贈与(そしてそれを隠しておくこと)や相続放棄(のお願いや半強制)といったことは、相続の場面でも想定できるケースです。ーー「身内とは揉めたくはない」「穏便に済ませたい」今後も親子・兄弟・親族といった関係は続くわけですから、そういった気持ちになることも多いと思われますし、損をガマンされてしまう方も多いでしょう。私はそれはそれで仕方ない、と思います。人生「何を大事にするか」は人それぞれです。お金、人間関係、故人の想い。どれを取ったとしても決して「間違い」ではありません。上記の「ストーリー」はほんの一例であり、とある人の選択に過ぎません。ただ、弁護士は、依頼があれば全力で依頼者の利益を守る、それだけです。依頼者の選択された途を全力でサポートする、それが弁護士の職務だと思います。