この事例の依頼主
60代 女性
相談前の状況
店の運営を任せていた店長が会社を辞めた後、突然、弁護士に依頼をして、「1日10数時間の労働をほぼ毎日していたのに残業代が一切支払われていない」などと主張して、600万円もの残業代を請求する労働審判を起こしてきました。確かにタイムカードはありますが、本当にタイムカードどおりの時間で働いていたのかもかなり疑問ですし、そもそも店長は経営者側で残業代は発生しないのではないでしょうか。このような多額の残業代はとても払えませんし、納得できません。
解決への流れ
元店長の職務内容・権限・責任、労働時間の裁量・勤務態様、賃金・待遇などについてそれを裏付ける資料とともに一つ一つ確認していった結果、残業代を支払う必要のない管理監督者と主張することができるだけの事情が認められました。また、勤務実態を一つ一つ検証していった結果、実際の勤務実態とタイムカードに矛盾が見つかり、タイムカードに打刻された労働時間の信用性が乏しいと考えられました。そこで、労働審判の中で、それらを各種証拠とともに主張し、その結果、管理監督者に対しても支払われる深夜割増手当分の60万円のみ支払うことで和解が成立しました。
管理監督者とは、労働時間の決定やその他の労務管理について経営者と一体的な立場にある従業員のことを言い、管理監督者にはいわゆる残業代は支払う必要がありません。ただし、裁判所は、この管理監督者に該当するか否かについてかなり厳格に判断をしているため、管理監督者と考えられる者を相手方とする未払い残業代事件の交渉、裁判手続などの方針を検討する際は、事実関係を一つ一つ検証し、慎重に検討する必要があります。また、たとえ管理監督者に該当したとしても、深夜労働に対する割増賃金は支払わなければならないことに注意が必要です。